(英エコノミスト誌 2023年6月17日号)

米国にとってインドはいまや最も大切な国になったと言ってもいい

インドは西側を愛していないが、米国にとって欠かせない国だ。

 中国を除くと、ロシアの戦時経済を大きく支えた国と言えば、石油に飢えたインドをおいてほかにない。

 また民主的な自由度のランキングで、これほど大きく地位を落とした大きな民主主義国もほとんど存在しない。

 だが、6月下旬の訪米の際にインドのナレンドラ・モディ首相がワシントンで受ける盛大な歓待からは、そんなことは思いも寄らないだろう。

 モディ氏はジョー・バイデン米大統領から国賓訪問の栄誉を与えられた。米国側はインドと防衛協定を結ぶことを期待している。

 モディ氏はウィンストン・チャーチルやネエルソン・マンデラ、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領と並び、米議会の上下両院合同会議で2度以上演説に臨む数少ない外国首脳の一人になる。

 両国のパートナーシップについて米議会で叫ばれる喝采は、ウクライナや民主主義、あるいは米国の新たな友情の邪魔になるものには一切触れない。

南アジアの巨人、世界的な影響力が急伸

 本誌エコノミストが最新号のアジアセクションで説明しているように、南アジアの巨人インドの世界的な影響力は急激に高まっている。

 インド経済は世界で5番目の規模を誇る。1800万人に上る在外インド人は、米国から中東湾岸まで世界の至る所で繁栄している。

 そしてインドは、米国がアジアで存在感を発揮し、中国の侵略を抑止する努力にとって欠かせない存在になった。

 だが、巨大なうえに資本主義、民主主義を敷き、中国を警戒している国でありながら、インドは貧しいポピュリストの国でもあり、スブラマニヤム・ジャイシャンカル外相のインタビューが浮き彫りにするように1945年以降の西側秩序の痕跡に否定的だ。

 このため米国とインドの関係は、多極世界に姿を現しつつある民主主義国の厄介な同盟関係のテストケースとなる。

 両国が認めたがる以上に共通の理念が少ないなか、双方が協調から商業、安全保障上の利益を得られるのだろうか?