(英エコノミスト誌 2023年6月10日号)

ロシア軍による破壊工作と見られる爆破でカホフカ水力発電所のダムが決壊、下流域は広範囲に水没した(6月7日撮影、写真:ロイター/アフロ)

ウクライナの反攻が本格的に始まろうとしている。今後数週間が正念場になる。

 ウクライナの兵士たちが「聖なる報復」への祝福を神に祈った、心を揺さぶる10日前の動画で予告された通り、ウクライナの反攻が始まった。

 ウクライナ軍は何週間もかけて、1000キロに及ぶ前線沿いを偵察して作戦を練り、弱点を探り、ロシア軍を撹乱してきた。

 そして現在、東部と南部に連なる敵の陣地に数カ月ぶりの激しい攻撃を加え、敵の防御を試している。

 6月6日にカホフカ水力発電所のダムが爆破された模様だが、もしこれが西側軍事筋の見立て通りロシアの破壊工作であるなら、ロシアがすでにプレッシャーを感じている明らかな証拠になる。

 これから数日のうちに、いろいろなことが起きる。主力部隊はまだ戦場に送られていない。作戦は夏に入ってもしばらく続く。

 しかし、向こう数週間に起きることはウクライナ自体の将来のみならず、欧州全体の安全保障の秩序を形作ることになる。決断を下す時がやって来た。

ウクライナの決意と西側の支援

 ウクライナの任務は、有り体に言えば、ウラジーミル・プーチンとその取り巻き、ロシア国民、そして戦争の様子を見守る世界中の人々に対し、ロシアに勝ち目はないこと、この侵略が最初から間違いであったこと、ウクライナとその西側の支援国よりも長期間戦う力はロシアにないこと、そしてクレムリンにとって最善の選択肢はロシアがこれ以上の損害と屈辱を味わう前に白旗を揚げることだと知らしめることだ。

 これは容易なことではなく、失敗するリスクも現実にある。

 だが、ウクライナの驚くほど固い決意と、予想以上に結束した西側諸国の強力な支援のおかげで、任務の成功は不可能ではなくなっている。

 成功のためには、最強クラスの外交的・軍事的支援、そして今後何年間もウクライナの味方になるという西側の明確な約束の2つが今すぐ必要だ。

 自分が選んだ愚かさ極まる方針についてプーチン氏が自分自身や国民に嘘をつける状況は、もう終わらせなければならない。