(歴史ライター:西股 総生)
具体的な穴場ポイントを伝授
こっそりお教えしましょう。実は、二条城は城歩き的にも京都観光的にも、意外な穴場なのである……はあ? 何言ってるの? という声が、聞こえてきそうだ。
確かに二条城は、日本の名城を紹介する本には必ず載っているし、いつ行っても観光客でいっぱいだ。とりわけ、修学旅行の生徒さんやインバウンドのお客さんで。
でも、彼らは二条城の「城としての」の本当の見どころを、ほとんど見ずに帰ってしまう。なので、「城としての見どころ」については、意外にもゆっくりじっくり楽しむことができる … というわけで、今回は写真多めで具体的に穴場ポイントをお伝えしよう。
まず、観光客はチケットを買ったら東大手門から入城するのだが、その前に軽く堀ばたを歩いてみよう。二条城には、東南隅櫓と西南隅櫓という二つの二重櫓が残っていて、東大手門のすぐ隣にあるのが東南隅櫓だ。
このサイズの二重櫓は、けっこうあちこちの城に残っているから、パッと見さほどスペシャルな感じはしない。でも、この城の櫓は、よく見ると均整のとれたデザインで、なかなかの京美人である。
二条城は徳川将軍家の京での宿所として造られた城だし、二ノ丸御殿がやたらと有名なので、何となくお屋敷っぽいイメージがある。石垣や堀も、大坂城や名古屋城のようにボリューミーではない。とはいえ、二重櫓が堀に面して建っている情景は、やはり城以外の何ものでもない。
いや、それどころではない。この城は、よく見ると実戦装備が満載で、相当に戦闘的な構えをしているのだ。パッと見ははんなり顔なのに、切れ味抜群の技を次々繰り出す戦闘美少女、みたいな城なのだ。
まず、観光客はほぼ全員、何も気付かずに東大手門をくぐるが、よく見ると、門の上にしっかりと石落としが口を開けている。観光客の皆様は、何も知らずに御討死である。