「土木とはなにか」に向き合う

「土木は種類が多い! 分類が複雑で分からない!」

 そんな言葉をよく耳にする。その通りだ。世間でいう“土木”とは、橋梁、トンネル、ダムの土木構造物(Civil Engineering Structure)であろう。これには、シールド工法やRCD工法など建設技術(Construction Technology)も含まれる。一方では、鉄道施設、道路施設、電力施設など、社会インフラ(Infrastructure)としての見方がある。

 これらを一緒くたにして“土木”で通ることがあり、大学/高専/大学院での学科専攻でも、「専門は土木です」と自己紹介することがある。「建築とどう違うの?」という質問にもきちんと答えたい。

 流行り言葉で言えば、土木の“アカウンタビリティ”を真剣に考える必要があるが、本書『DISCOVER DOBOKU』では、事例と物語にて答えている。それはまた、企画・設計・施工・運用/維持管理に携わる多くの方の叡智と熱量へのリスペクトと考えている。

“すごい” “役に立つ”から一歩踏み出すために

 社会インフラを構成する土木構造物は、元来、見る者を惹きつける魅力をふんだんに具備していることは間違いない。それは、すでに現場見学・社会見学、インターンシップ、各種イベントが花盛りであることから分かる。インフラツーリズムが全盛であり、webサイトやSNSが後押ししている。

 ただ、“土木は雄大で凄い”、“土木はみんなの役に立っている”から一歩二歩踏み出すことが必要であり、発信側の工夫と努力が必要だ。筆者は、「魅せる土木」と称し、社会活動の一環として執筆と講演を行っている。

 主宰しているwebサイト「土木ウォッチング」とfacebookページ「Discover Doboku」は、当初、学生/院生や土木関係者を対象にしたものであったが、多くの賛同者を得て、土木ファンが増えている。

 本書は、長年にわたり取り組んできた“魅せる土木”の応用講座の集大成ともいえる。出来あがった本書を読み返すと、まさしく「めくってもめくっても土木」だ。まずは目次を眺め、興味があるページを開き、読み進めていただきたい。