日本でもフランスでも、歴史的建築に安易に手を入れることはできない。普通の改修ならば、階段を新たに加える程度になりがちだ。安藤氏は、既存の建物を守りながらも、見え方を一新する方法を考え出したのだ。筆者もそうであったように、来館者の多くがシリンダーの3階に上ると「おおっ」と声を上げていた。

シリンダーの3階
展示されていた改修後の断面模型

パリ老舗百貨店の2棟をSANAAが再生

 そして、もう1つの「ラ・サマリテーヌ」。セーヌ川のほとり、ポンヌフ橋のたもとにある大型百貨店だ。こちらは2021年6月にリニューアルオープンした。

「ラ・サマリテーヌ」。左が歴史的建築のポンヌフ棟、右が新築のリヴォリ棟

 設計・監修を担当したのはSANAA(サナアと読む)。妹島和世(せじまかずよ)氏と西沢立衛(にしざわりゅうえ)氏による建築家ユニットだ。2人は、“建築界のノーベル賞”ともいわれるプリツカー賞を2010年に受賞している。安藤忠雄氏も1995年に同賞を受賞しており、国際的に活躍する日本人建築家の中でツートップと言ってもよいだろう。