毒食の始まりはコメの見栄えを良くしようとして塗った工業用ワックス

 中国共産党支配下の中国における毒食の歴史は、人民公社の廃止にはじまる。人民公社がなくなって、収穫された米が個人のものになると、みんな備蓄するようになった。相場を見て売るためだ。ところが、蓄えておいた米にはカビが生えてしまう。だからそれをもう一度精米して売ろうとする。するとこんどは削りすぎて見た目が悪くなる。そこで艶出しに工業用ワックスを塗って販売したことが、中国の毒食のはじまりとされている。

 さらに中国国内でも有名なのは、1980年代に白酒に工業用アルコールを混ぜて販売して、飲んだ人たちの目が悪くなった事実だ。

 四川省などでは、牛脂を使うはずの鍋料理に、見た目がいいからと工業用ワックスを混ぜたこと、湯葉を漂白剤で白くしていたことなどが相次ぐ。

「中国人でもそんなのは信じられないよ」と、過去を知る中国人がこぼしていたほどだ。その原因をたどれば、どれも無知と欲望が混ざり合った、人為的で確信犯的な毒食汚染の蔓延に尽きる。その原点を無視して、意図的に日本の食品を毒食扱いするのであれば、意趣返しどころか悪意以外のなにものでもない。

2008年、中国では乳児用の粉ミルクで、タンパク質含有量を贋造するために有機化合物「メラミン」を利用したケースが発覚。メラミン入りの粉ミルクを飲んだ乳幼児が腎不全になるケースが相次いだ。写真は安徽省合肥の病院で、腎臓結石の疑いで治療を受ける生後8カ月の乳児(写真:ロイター/アフロ)

 1990年代になっても、中国の薬物による毒食汚染が問題になった。それで知られるのが『痩肉精』の問題だ。

 中国では「肉」といえば、豚肉のことを指す。豚肉でも赤身肉が多いほど高額で取引される。そこで豚の脂身を減らして赤身肉を増やすために、餌に混ぜる添加物が中国で出回った。それが『痩肉精』だった。「痩肉」は赤身肉のことをいう。

 ところが、この添加物による中毒事件が中国各地で頻発する。『痩肉精』の主成分は喘息の治療にも使われる「塩酸クレンブテロール」で、人体に入ると吐き気、めまい、無気力、手が震えるなどの中毒症状が出て、毒性も高い。