(杉山大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
科学的な常識を欠く報告書
前回の本コラム「薄い根拠で「脱炭素」を煽る環境白書、政府はきちんと統計データを示すべきだ」では、気候変動の危機を理由に「脱炭素」を推進する日本政府の環境白書で、気象観測による統計データがほとんど示されていない問題を指摘した。
不都合な観測データを隠すのは日本政府だけの問題にとどまらない。
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が3月20日に公表した第6次統合報告書は3つのパートに分かれている。
- 第1部会:気候の科学
- 第2部会:環境影響
- 第3部会:排出削減
本稿では、環境影響(impact)を取り扱っているのが第2部会報告を取り上げる。
率直に言って、この報告は科学的な常識を欠いたものと言わざるを得ない。
なぜなら、日本の環境白書と同様に、観測に基づく統計データの図がほとんど載っていないからだ。