今回の『LAタイムズ』の報道の裏には自分たち以外の他球団にトレードでの大谷獲得を消極的にさせようと目論むドジャース側の意思も反映されているはずだ。ドジャースは同じ地元で『LAタイムズ』の幹部にも顔が利くことを考えれば、辻褄も合う。

 いずれにせよ、ドジャースはエンゼルスとのトレード話が進展せずFAまで持ち越しになっても大谷獲得へ本腰を入れることは間違いない」

前言撤回も厭わないエンゼルスのモレノ・オーナー

 ドジャースは11日現在で37勝29敗の貯金8でナ・リーグ西地区2位。同地区首位のアリゾナ・ダイヤモンドバックスを3.5ゲーム差で追走し、地区Vも十分狙える。ナ・リーグWC争いでもマイアミ・マーリンズと勝率で並び首位タイだ。大谷が望む「ヒリヒリした9月」をトレード移籍によって叶えられそうな状況下にあり、ドジャースとしてもポストシーズンを勝ち上がってワールドシリーズ制覇を視野に入れる上で願わくは大谷獲得を起爆剤としたいところだろう。

 昨オフのドジャースが大物獲得にはほとんど動かず控え目な補強に終始したのも、史上最高額の12年総額6億ドル(約836億3700万円)とまで見込まれる大谷との契約資金を捻出するためともっぱらだ。ボストン・レッドソックスから「DH専門」の35歳ベテラン、J・D・マルチネスを1000万ドル(約13億9000万円)の単年契約で獲得したのも大谷獲得の布石とみられている。仮にトレードで大谷を獲得するにしても、今季終了後にFAとなるタイミングでビッグディールのオファーをかけ、あらためて長期契約を締結する算段なのだろう。

 エンゼルスのモレノ・オーナーは身売りを一度決断し買収先を募っておきながら結局、悩んだ末に前言撤回してしまったような人物だ。大谷のトレード説がまだ消えていないと疑う一部米メディアのように「何が起こるか分からない」ととらえておくのは賢明であろう。一つ言い切れるのは、渦中の大谷とエンゼルスの裏側にドジャースがXデーのチャンスを伺いながら暗躍しているということである。