JR甲斐大和駅に立つ武田勝頼の銅像

 NHK大河ドラマ『どうする家康』で、新しい歴史解釈を取り入れながらの演出が話題になっている。第20回放送「岡崎クーデター」では、武田信玄亡きあと、武田勝頼率いる武田軍が意外に手ごわい戦いぶりを見せて、徳川家康を追い詰めていく。そのうえ、家康の嫡男である信康が城主を務める岡崎城で不穏な動きが・・・。その見所について、『なにかと人間くさい徳川将軍』の著者で偉人研究家の真山知幸氏が解説する。(JBpress編集部)

「武田勝頼」は果たして無能だったのか?

 歴史は勝者によって作られる――。そう言われるように、敗者となった歴史人物には辛辣な評価が下されることが珍しくない。それも敗北の影響が本人のみならず、組織全体を廃れさせたとなれば、その悪評は時代を超えて語り継がれることになる。

 戦国時代においていえば、今川氏を滅亡へと追い込んだとされる今川氏真や、羽柴秀吉に敗れて北条氏を滅ぼすことになった北条氏政の評価は、どうしても厳しいものとなる。細かい政策をみていけば、名門が勢いを失うなかで家督を継ぎ、やれることは意外とやっていたりもするが、良い見方をされることはまれである。

 ましてや、「常勝軍団」とも言われた最強の武田軍を滅亡させたとなれば、そのリーダーを責めたくなるのも無理はない。武田信玄亡きあとに、武田軍を率いた武田勝頼は、後世から厳しく評価されている人物の一人である。

 そのため、フィクションにおいても勝頼は「ただオロオロするだけの無能なリーダー」として描かれやすい。その点、2016年放送の大河ドラマ『真田丸』では、平岳大演じる武田勝頼が次々と家臣に裏切られるなか、その運命を静かに受け入れる演技が評判を呼んだ。

 勝頼を「悲哀あふれるリーダー」として描くことで、その人物像に迫ったわけだが、今回の『どうする家康』では、さらに攻めた人物描写を行っている。眞栄田郷敦演じる武田勝頼が「勝頼史上最もカッコいい描かれ方」をしているのだ。

 第20回放送「岡崎クーデター」では、知られざる名リーダー、武田勝頼の魅力が存分に発揮されることとなった。