京都駅の南側にある東寺(筆者撮影)

建物の高さ・容積率規制を緩和する真の狙い

 コロナ禍でインバウンドが消失していた京都に活気が戻ってきた。GW中の人出は昨年比13.2%増の39万5000人だったと報じられている。

 5月中旬、取材で京都を訪れたが、平日にもかかわらず街なかや観光スポットはインバウンドと修学旅行生であふれ返っていた。先斗町では人気のお好み焼き屋の前に比較的若い世代の外国人男女が群れをなしていた。

先斗町の外国人客(筆者撮影)

 強烈だったのは、電車の混雑ぶりだ。伏見稲荷大社に向かうため、JR京都駅で朝8時台の奈良線の電車に乗ろうとしたが、乗車口まで人でいっぱい。中央線の通勤ラッシュ並みだ。なんとかスペースを見つけて乗り込む。周りは大学生とインバウンドばかりだった。

 5分ほどで最寄りの稲荷駅(京都駅から2駅目)に到着すると、乗客が一斉に降車した。伏見稲荷を参拝する外国人と近くにキャンパスがある龍谷大の学生たちだった。

朝のラッシュ(稲荷駅/筆者撮影)

 伏見稲荷もにぎやかだった。世界各地からやってきた観光客と修学旅行生たちがフォトジェニックな千本鳥居の前で記念撮影。コロナ禍のころの閑散とした光景がウソのようだ。

修学旅行生と外国人観光客で賑わう伏見稲荷(筆者撮影)

 観光需要の復活はひと安心だが、京都市は人口減と財政難という二つの大きな課題を抱え込んでいる。年間1万1913人の人口減(2021年・年間)で、2年連続で全国最多となった。財政は市債残高が1兆5000億円超もある。観光客が戻りつつあることぐらいでは喜んでもいられないのである。

 そうした状況下で京都市はこの春、大きな賭けに打って出た。2007年に歴史的な街並みを保存するために策定した「新景観政策」の見直しに踏み切ったのだ。

 4月25日から施行された新たな都市計画では、JR京都駅南側や市東部の山科地区など複数のエリアで建物の高さや容積率を緩和した。昔ながらの京町家が残る駅北側のエリアは変更しない。

 見直しの対象となった京都駅南側エリアでは、大通り沿いの高さ制限を現在の20~25mから31mに引き上げた。市東部の山科駅付近は、大通りに面して一定の要件を満たす土地は高さ制限を撤廃。建物の1階部分に店舗を設けるなどの条件を満たせばタワーマンションも建設可能となった。

 高さ規制や容積率の緩和によりマンションなどを増やすことで子育て世代の人口流出を防ぐこと、オフィスや各種施設などの集積化を実現させることなどを通じ、人口増と税収増を図ろうというのが市の狙いだ。