タワマン建設が可能になれば人口流出は止まるのか

 今回、京都を訪れた際に京都駅周辺から南側のエリアを歩いてみた。

 駅の東側にあたる崇仁地区では、文化芸術を軸にした再開発が進み、市立芸術大が移転予定だ。南側エリア(駅東南部)にある東九条では、アート集団「チームラボ」と京都、大阪を基盤とする複数の企業による複合文化施設の建設計画が進んでいる。

京都市東部に移転する市立芸術大学(筆者撮影)

 さらに九条通から油小路一帯では病院やホテルの建設工事が行われていた。この一帯は確実に変貌を遂げていて、いわゆる「京都らしさ」をあまり感じないエリアという印象を受けた。今回の見直しで高さ制限、容積率が緩和されたことで、さらに街並みが一新されていきそうな気配だ。

 問題は、規制緩和を盛り込んだ新たな都市計画で、人口減少に歯止めをかけることができるかどうかだ。

 これまで京都市内ではホテルの建設ラッシュや外国人による町家などの不動産取得に伴う地価上昇で住宅コストが上昇し、子育て世代が滋賀県の大津や草津、あるいは京都市郊外の周辺市などへ転出するケースが増え、人口減の大きな理由とされてきた。高さ規制、容積率緩和で、子育て世代が住むことができる住宅を供給できるようになるのだろうか。

 条件付きで高さ制限が撤廃された山科地区ではタワーマンションの建設も可能となった。今後、住宅供給戸数が増えることは間違いない。だが、子育て世代にはハードルが高いのではないかという指摘もある。地元の不動産関係者がいう。

「京都市中心部、いわゆる“田の字”と呼ばれるエリアのマンション事情ですが、新築だと3LDKで8000万円から1億円はしますね。JRで京都駅まで5分の山科地区の物件を見ると、3LDKで5000万円台半ばといったところ。すでにかなり高騰してきています。

 隣県(滋賀県)の大津市内となると、3LDKで4000万円を切ってきます。東京の人にはピンとこないでしょうが、大津から京都まではJRでわずか10分です。700戸超の大規模マンションとして話題になっている琵琶湖に近い物件は最寄り駅が膳所。それでも京都まで3駅13分です。こうした現状から、京都市内から大津市周辺に移り住む子育て世代が増えているのです」

 では、今後規制緩和で山科地区にマンションが増えれば、大津周辺に流出していた子育て世代を山科につなぎとめることはできるのか。

「供給面ですが、タワマンの建設も可能になるので住宅が増加することは間違いない。ただ、規制緩和で地価が上昇し、マンション価格が高騰する事態が予想されますから、子育て世代には手が出しにくい状況は続くのではないでしょうか」(前出の不動産関係者)