ヒントン氏は「プーチン大統領がウクライナ人を殺す目的で超知能ロボットを作らないと、思わないでください」と明言する。

 ただ一方で、別の専門家からは「AIによって人類が滅亡することはない」との見方も出ている。

 カナダ出身の小説家で、評論も行うステファン・マルケ氏は「AIによって人類が大惨事に直面することはない」と述べる。

 英ガーディアン紙に発表したコラムでこう記している。

「コンピューターには意志がない。アルゴリズムは一連の命令であり、AIは人間によって発見され、確立される必要がある」

「実際に人類滅亡の心配の種がないわけではないが、汎用人工知能が世界を征服しようという話はSFの範疇のことであって、恐怖は宗教的なものだ」

 いくらAIの生みの親であるヒントン氏が警鐘を発しても、大騒ぎする必要はないという立場である。

「私は2017年からAIに取り組み、報告もしてきた。多くのAI関係者は人文科学の分野の重要性を認識しておらず、AIがどのように相互作用するのかを理解していない傾向がある」

 また米首都ワシントンにあるシンクタンク、ケイトー研究所の研究員ティモシー・リー氏も、端的に「AIが人類を滅ぼすわけではない」と述べた後、次のような肯定論を展開する。

「優れたAIであっても、世界征服を成し遂げられるわけではない。世界征服を本当に実現させようとしたら、人手やインフラ、天然資源などがなければできない」

「そのため、AIによる支配を防御するためには人間が物理的な世界をしっかりと制御していれば大丈夫」