こうした中、中央日報も「首脳会談で用意された関係改善の契機を生かすには日本側の誠意ある措置が必要」との専門家の意見を紹介し、「強制徴用問題解決過程への日本側被告企業の参加の有無は言及されなかった」と指摘した。
首脳間では徴用工問題解決の道筋は見えているが、国民レベルでは未だ納得していない人が多いようである。
元徴用工問題の解決策と関連して、韓国の全国経済人連合会(全経連)と日本の経団連は「未来青年基金」を共同で設立することで合意している。この基金に元徴用工が働いていた、日本製鉄や三菱重工などが拠出するかどうかに韓国側の注目が集まっている。それと同時に元徴用工と遺族がそれで納得するかどうかという問題がある。
ただその一方で、元徴用工問題の解決に関して、裁判で勝訴した原告への解決金が韓国政府傘下の財団から支払われている。4月13日の韓国外交部の発表では原告15人のうち10人の遺族が受け取りに同意した。残りの5人は日本側の謝罪がないなどとして受け取りを拒否していたが、7日原告の生存者1人がさらに受け取りに同意したという。財団ではさらに説得を続ける方針であり、受け取りがさらに増える可能性もある。できる限り多くの原告が解決金を受け取ってもらうことがカギである。
尹錫悦大統領が徴用工問題の解決に急ぎすぎると、再び支持率の低下を招きかねない。この支持率低迷が続き、もしも来年4月に迫った韓国の総選挙で与党の敗北となれば、日韓関係は再度停滞するだろう。徴用工問題を軟着陸させる課題は、首脳間で合意を得るより難しいかもしれない。
原発処理水問題にも韓国で言及した首相
さらに、福島第一原発の処理水の海洋放出に対して韓国の国民感情が強く反発している。韓国側から、IAEAの調査に加え、日韓の共同調査を求められていた。これを受け、会談において日本は韓国の専門家視察団の派遣を受け入れることで合意した。
加えて岸田首相は、韓国国民の健康や海洋環境への影響にも配慮する姿勢を示した。
それを受け、韓国の福島原発処理水問題に対する韓国の専門家らの現場視察団は23日に現場を訪問する模様である。
しかし、視察団の受け入れは現実には様々な問題を内在しているように思う。