(武藤 正敏:元在韓国特命全権大使)
3月16~17日に韓国の尹錫悦大統領夫妻が訪日したが、5月7~8日には岸田文雄首相夫妻が訪韓した。12年ぶりのシャトル外交の実現である。
尹大統領の訪日では、元朝鮮半島出身労働者(元徴用工)問題の解決に向けた道筋ができ、首脳によるシャトル外交に同意し、安全保障をはじめとする重層的な政府間協議の再開や経済協力、若者の交流に合意した。
しかし、韓国社会には、尹大統領訪日時の合意は「今回の合意は韓国側の一方的な持ち出しだった」との不満も燻ぶり、尹大統領の支持率も下落した。
尹大統領の日韓関係改善意欲に応えた岸田首相
尹大統領は訪日の後、4月26日にアメリカを訪れ、バイデン大統領と米韓首脳会談を行った。そこで北朝鮮の核拡大抑止に向けてのワシントン宣言が発表され、首脳の共同宣言では韓国が自由・民主主義のグローバル中枢国家としてアジア太平洋でより重要な役割を果たしていくことも明らかとなった。
岸田首相の訪韓はこうした一連の首脳外交を踏まえたものであり、前回の尹大統領訪日の52日後という短期間で実現した。今回の訪韓によって、岸田首相は尹大統領の日韓関係改善の努力に応えようとしたと言えよう。