(国際ジャーナリスト・木村正人)
プーチン「祖国に対して再び本当の戦争が解き放たれた」
[ウクライナ中部クリヴィー・リフ発]ウクライナ侵攻から2回目の対独戦勝記念日を迎えた5月9日、モスクワの赤の広場では軍事パレードが実施され、ウラジーミル・プーチン露大統領は「文明は決定的な転換期を迎えた。祖国に対して再び本当の戦争が解き放たれた」と対ウクライナ特別軍事作戦の正当性を改めて強調したが、見通しは全く示せなかった。
ベラルーシ、アルメニア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタンの首脳がプーチンとともにパレードに出席し「多極化した世界秩序」を演出。しかし中央アジア諸国の首脳たちは当初出席を渋り、逆に足並みの乱れを際立たせた。ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は「体調不良」を訴え、別行動を取った。
軍事パレードに参加した戦車は第二次世界大戦時のソ連製T-34型1両のみ。「プーチンとクレムリンは嘲笑された。年に一度のこのイベントでは通常、数千人のロシア兵が数百台の軍用車両を従えて赤の広場を行進する」と米誌フォーブスは皮肉った。安全保障上の懸念からパレードは大幅に縮小され、少なくとも他の20都市でパレードそのものが中止された。
同誌によると、「赤の広場」での軍事パレードに参加したのは軍人ではなく士官候補生や軍事大学の学生とされる1万人弱の部隊と約125両の装備にとどまった。
プーチン殺害のためウクライナ軍が大統領公邸にドローン攻撃を仕掛けたとロシア側が非難している問題の影響か、恒例の赤の広場上空でのロシア軍機によるフライパスト(儀礼飛行)も中止された。
「モスクワのパレードには最新の戦車も歩兵戦闘車も航空隊もなかった。10分もかからないロシア史上最小のパレードだった。イスカンデル(短距離弾道ミサイル)、アルマータ(第4世代主力戦車T-14)、軍用機もない。ロシア国防省は例年とは異なりパレード参加者の情報を公表していない」とウクライナ内相顧問アントン・ゲラシチェンコ氏はツイートした。