5月9日の対独戦勝78周年の記念式典で演説するロシアのプーチン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(舛添 要一:国際政治学者)

 5月9日、ロシアの第二次世界大戦戦勝記念日に、規模は縮小されたが、赤の広場で軍事パレードが行われた。式典で演説したプーチン大統領は、ウクライナ侵攻をネオナチとの戦いとして正当化した。その演説を聴くかぎり、戦争の短期終結の可能性は極めて低い。

「本物の戦争」という表現

 プーチン演説の内容を検討してみよう。

 冒頭で、この日が、ナチズムから人類を救った記念日であることを強調し、父祖たちの戦いを讃えた上で、「今日、現代文明は再び重要な転換点を迎えている」と述べた。

 つまり、「我々の祖国に対して再び本当の戦争が開始されたが、我々は国際テロを撃退し、ドンバスの住民も守り、我々の安全を確保している」と、ナチスに攻撃された独ソ戦と今のウクライナ戦争を二重写しにさせたのである。

 ヒトラーが独ソ不可侵条約を破ってロシアに侵攻したように、「欧米のエリートたち」が、ウクライナを支援してロシアに対して「本当の戦争」を始めたという論理である。

 自らが行った国際法違反のウクライナ侵略については不問に付した上で、欧米が、「ロシアに対する新たな進軍を冷笑的かつ公然と準備し、このために世界中からネオナチのろくでなしを集めた者たちによる露骨な報復」をしたと断定した。