尹大統領が「歴史問題が完全に整理されなければ未来志向に向け一歩も踏み出すことができないという認識から抜け出さなければならない」と述べたのも同様の意味だ。だたし、この言葉は韓国社会の問題を言い当てているばかりでなく、日本社会にも当てはまるものだ。
日本には、ソウルの日本大使館や釜山の総領事館前の慰安婦像が撤去されるまで韓国との協力は控えるべき、との声が多い。もちろん慰安婦像は撤去されなければならないが、「撤去されるまで協力はしない」ということが果たして日本の国益になるのかについては、冷静に考えてみる必要があるだろう。
韓国世論が割れた、岸田首相の歴史認識に対する評価
岸田首相が尹大統領との共同記者会見で述べた言葉に対して、保守系メディアは肯定的に評価したが、否定的に受け止めている層もある。率直に言って、韓国の評価は分かれている。
保守系主要紙の中央日報は、岸田首相の発言は「強制徴用被害者の苦痛に共感を示す発言」、「責任を回避していた日本政府の立場からは大きく変化した態度」と評価した。また朝鮮日報も「未来に進まなければならない」と尹大統領のイニシアティブに呼応した。
その反面、進歩系のハンギョレ新聞は「岸田首相、強制動員について謝罪せず…『3・16会談*』の繰り返し」「過去の出来事に『心が痛む』という岸田首相…『対象不明の表現』」などとのタイトルで日韓首脳会談に関する論評を載せ、「過去の日本の首相や官房長官の発言に比べても物足りない」と批判した。
* 3月16日に東京で開催された日韓首脳会談のこと