一触即発の事態にならぬよう注意が必要

 なお、航空法第99条に基いて発行されるAIP(航空路誌)では、有視界飛行方式により国外からADIZを経て日本の領域に至る飛行を行う場合、飛行計画を航空管制機関に提出すること、事前に提出された飛行計画と異なる飛行を行う場合は航空管制業務機関および航空自衛隊のレーダーサイトに無線通報することを要請している。

 もっとも、これはあくまで要請であって法的義務ではない。かつては筆者が操縦するような民間航空機でも他国のADIZに入る約10分前などに位置通報していたが、現在では民間機は、飛行計画を提出していれば、そうした通報なく通過・進入することが許されるように変わった。

 日本のADIZでは、特に南西諸島空域で主に中国軍機がよく無断で進入するため、121.5MHzの緊急周波数の無線によって航空当局が「すぐにADIZを離れるように!」と呼びかけるが、応答することはまずない。

 いずれにしてもADIZは当該国が勝手に設定して運用しており、軍用機の要撃の方法や対処が異なる。そこを飛ぶ航空機は注意が必要で、一触即発の事態にならぬようにしなければならない。