フィリピンから移送される渡辺優樹容疑者(左)と小島智信容疑者(提供:Bureau of Immigration/AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 関東をはじめ各地で相次ぐ広域強盗事件。一連の事件では、SNSの「闇バイト」に応じた実行役に、「ルフィ」や「キム」などと名乗る指示役が、フィリピン国内から通信アプリで指示を送っていたことが判明している。

 フィリピン当局は、入管施設で拘束されていた今村磨人(38)、藤田聖也(38)両容疑者を7日に、渡辺優樹(38)、小島智信(45)両容疑者を8日に、それぞれ身柄を日本側に引き渡し、強制送還した。4人は移送中の航空機が日本の領空に入ったところで、別の窃盗容疑で逮捕された。この4人の中に「ルフィ」がいると見て捜査を進める。

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 4人は、フィリピン国内の拠点から日本国内に電話をかけ、金融庁職員や警察官などを名乗ってキャッシュカードを用意させ、自宅を訪れてカードを盗む特殊詐欺で、2019年に拠点を現地当局に摘発されて36人が拘束された事件の幹部とされる。すでに渡辺容疑者ら3人には19年4月に、藤田容疑者には21年7月に逮捕状が出ていて、現地で身柄を拘束されていた。

 しかし、日本側がフィリピン政府に強制送還を求めても、現地での刑事裁判が続いていることや、コロナ禍の移送の困難さなどを理由に、実現しないままだった。その間に入管施設から4人が一連の強盗事件を指示していた疑いがある。

 それがここへきて強制送還されたのは、一連の事件で人命が奪われたことが大きい。先月19日に、東京・狛江市の住宅で高齢女性が殺害された強盗殺人事件にも「ルフィ」や「キム」の関与が浮上した。