どこが逮捕できるタイミングなのか

 もし日本の領空で逮捕となれば、前述のように日本の沿岸からわずか12海里の範囲で逮捕したことになる。着陸までわずか30分程度しかない地点となり、警察の発表とは異なってくる。

 では警察官は公海上(公空)のどこで容疑者を逮捕するのか?

 実はJALのパイロットを長年務めた筆者も同じルート上で、犯罪容疑者の移送にかかわった経験がある。

広域連続強盗事件に関し、2月にフィリピンから今村磨人容疑者と藤田聖也容疑者を移送した際はJAL便が使われた(写真:ロイター/アフロ)

 当時、離陸前に同乗する警察官から要望を受けたのは、フィリピンのFIR(飛行情報区)から日本のFIRに入ったら教えてほしいということであった。

 FIRとは航空管制の受け持ち区のことで、フィリピンから日本へのフライトの場合、途中でマニラFIRから福岡FIRに切り替わる(実際の管制官は沖縄の「那覇コントロール」に引き継がれている)。マニラから東京へのルートの場合、マニラFIRから福岡FIRに入るタイミングは、マニラ離陸後、約1時間北上した洋上になる。

 FIRが変わる場所は、あくまで管制の引き継ぎの境であり、領空ではない。当事国の主権が及ぶ空域ではないが、慣習的にその段階で逮捕状を執行しているようだ。

 そのときの筆者も、マニラFIRから福岡FIRに入った時点で同乗していた警察官に連絡し、警察官はそれを確認して容疑者に手錠をかけて逮捕した。