どこが逮捕できるタイミングなのか
もし日本の領空で逮捕となれば、前述のように日本の沿岸からわずか12海里の範囲で逮捕したことになる。着陸までわずか30分程度しかない地点となり、警察の発表とは異なってくる。
では警察官は公海上(公空)のどこで容疑者を逮捕するのか?
実はJALのパイロットを長年務めた筆者も同じルート上で、犯罪容疑者の移送にかかわった経験がある。

当時、離陸前に同乗する警察官から要望を受けたのは、フィリピンのFIR(飛行情報区)から日本のFIRに入ったら教えてほしいということであった。
FIRとは航空管制の受け持ち区のことで、フィリピンから日本へのフライトの場合、途中でマニラFIRから福岡FIRに切り替わる(実際の管制官は沖縄の「那覇コントロール」に引き継がれている)。マニラから東京へのルートの場合、マニラFIRから福岡FIRに入るタイミングは、マニラ離陸後、約1時間北上した洋上になる。
FIRが変わる場所は、あくまで管制の引き継ぎの境であり、領空ではない。当事国の主権が及ぶ空域ではないが、慣習的にその段階で逮捕状を執行しているようだ。
そのときの筆者も、マニラFIRから福岡FIRに入った時点で同乗していた警察官に連絡し、警察官はそれを確認して容疑者に手錠をかけて逮捕した。