4月15日、和歌山県・雑賀崎漁港で襲撃された後も、和歌山県内で遊説を行った岸田文雄首相(写真:UPI/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 岸田文雄首相が衆院補欠選挙の応援演説に訪れた和歌山市の漁港で、爆発物を投げ込まれ、爆発した事件。安倍晋三元首相が昨年7月の参院選挙の応援演説中に銃撃された事件から、1年も経たずに同様の政治テロが続発している。

 昨年から今年にかけて、SNS上の「闇バイト」を通じて多発した強盗事件。東京・狛江市の事件では住人の命が奪われている。それがフィリピンからの指示であったように、カンボジアやタイなどの海外に拠点を置いて仕掛けられる特殊詐欺事件の摘発も相次ぐ。

 日本の治安は悪化したのだろうか。何が起きているのだろうか。

昨年から増加に転じた刑法犯認知件数

 治安や犯罪情勢を知る上で、ひとつの指標となるのが刑法犯の認知件数だ。警察庁が公表している統計によると、昨年2022年の刑法犯認知件数は60万1331件。その前年の2021年は56万8104件だったから、5.8%増加している。

 実は、刑法犯認知件数は2002年の285万3793件をピークに、一貫して減り続けてきて、2021年は戦後最少を記録していた。昨年はその減少傾向が滞り、20年ぶりに増加に転じたことになる。

 さらに警察庁が国民の体感治安に影響するとして、治安情勢の観察についての指標としているものに「重要犯罪」がある。これは殺人、強盗、放火、強制性交等、略取誘拐・人身売買、強制わいせつを合わせた数値で、2022年の認知件数は9535件だった。こちらも2021年の8821件より8%の増加で、コロナ禍以前の水準に近づいている。