カンボジア南部、シアヌークビルのチャイナタウンの風景。写真はコロナ禍のさなかだった2020年2月に撮影されたもの(写真:ロイター/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 カンボジアを拠点にした日本の特殊詐欺グループの男19人が現地当局に拘束され、警視庁が詐欺容疑で逮捕状を取ったことが、今月7日に一斉に報じられた。

 NTTドコモを装ったショートメールを送り、「有料サイトの未払い料金がある」と説明して、電子マネーを騙し取ったとされる。男たちは20〜50代で、「観光ビザ」で入国したと説明しているという。

 その特殊詐欺グループが拠点としていたのが、カンボシアのビーチリゾート、シアヌークビルのホテルだった。それも海がすぐ目の前のプール付きのリゾートホテルだった。

道路も舗装されていなかったほんの少し前のシアヌークビル

 カンボジア南部の港湾都市だったシアヌークビルは、中国の投資によって急速にそれも大規模な開発が進み、ホテルやカジノが立ち並び中国人観光客が多く訪れる場所としても知られる。

 首都プノンペンから200キロ近く離れたシアヌークビルを、過去に訪れたことがある。ただ、私の知るシアヌークビルは、特殊詐欺グループが拠点としたリゾートホテルができたり、中国が「一帯一路」構想を武器に押し寄せたりする以前の姿だ。

「シアヌークビルは、きれいでいいところですよ」

 ある編集者にそう教えられたことがきっかけだった。東南アジアの取材に合わせて、思い切って足を伸ばしてみた。習近平がまだ国家副主席だった時代だ。