習氏の中国では、利用しているサプライチェーンで労働者が酷使されていないかどうかを外国企業が検査することにさえ危険が伴う。

 強力な法執行機関である共産党中央政治法務委員会は4月15日を「全民国家安全教育日」と位置づけ、経済安全保障の分野などにおける外敵の狡猾な手口に気をつけるよう中国市民に警告した。

 あるケーススタディーでは、新疆で強制労働が行われているとの疑いを「でっち上げている」外国NGO(非政府組織)を手伝った中国籍のサプライチェーン監査担当者が、反スパイ法により罰せられたことが取り上げられていた。

デリスキングは結局「封じ込め」

 これは不幸なトレンドの反映だ、とあるサプライチェーン専門家は話す。

 2、3年前には、中国の納入業者は外国の監査を品質管理の表れだとして甘受していた。

 ところが今では「広く定義された強制労働に関連することは、何であれ完全にタブーだ。そういう質問をすれば、接触のある人全員を必ず危険にさらすことになる」と言う。

 大手の監査法人は、アクセスが制限されていることを理由に、新疆での仕事を断っている。

 多くを物語るのは、自国の利益にかなう場合には、中国が外国人にデュー・ディリジェンスの実施を許可することだ。

 2022年の後半、米国政府当局者が中国の半導体メーカー数社を訪問することを許された。

 米国の技術が軍関連のエンドユーザーに販売されていないことをチェックするためだ。

 この判断には、両者の力の差が反映されていた。

 米国は半導体製造の多くの分野を牛耳っており、中国企業をブラックリストに載せることをちらつかせていたのだ。

 中国との関係に対応するアプローチとして、デリスキングは決して愚かなやり方ではない。

 信頼関係が崩れたときには、関与を続けるためにリスク管理が不可欠だ。

 それでも中国が今後も、デリスキングを単なる封じ込め策の一形態と呼ぶと思っておいた方がいい。

 デカップリングを回避するのは容易ではない。