(英エコノミスト誌 2023年4月22日号)
西側同盟国は成功を期待しているが、過度な成功は望んでいない。
「背骨をやるんだ!」
男がロシア語でこう叫び、同僚をたしなめる。
「何だよ、おまえ首切ったことないのか?」
その動画にはロシア兵が短剣で、まだ生きているウクライナ兵の首をはねたと思しき光景が映し出されている。
「そのずだ袋に入れろ」
違う男の声がする。
「こいつの上官に送りつけてやるんだ」
ロシアの著名な極右アカウントがソーシャルメディアサイト「テレグラム」に4月11日に投稿したこの動画を見て、ウクライナの人々は怒り心頭に発した。
「誰もが反発しなければならない」
ウォロディミル・ゼレンスキー大統領はこう語った。
「我々は何もかも決して忘れない」
ゼレンスキー氏の軍隊は近々報復のチャンスを手に入れる。
反転攻勢に双方が備え
ウクライナの反転攻勢があと数日か数週間で始まる見込みだ。いつどこで始まるかを正確に知る者はほとんどいない。
ウクライナのオレクシー・ダニロフ国家安全保障・国防会議書記は4月6日、詳細をすべて把握しているのは5人の幹部だけだと語った。
だが、ロシア兵は備えている。
英国の国防情報局は4月12日、ウクライナがメリトポリを目指して攻撃してくると読んだロシアはザポロジエ州の前線に120キロに及ぶ3重の防御線を構築し終えたと語った。
シロケという町から南東方向に主要道路のP37号線に沿って「竜の歯」と呼ばれる対戦車障害物をずらりと並べたという。
メリトポリを落とせば、ウクライナ軍は、東部ドンバス地方とクリミアのロシア占領地をつなぐ細長い陸地を遮断しやすくなる。
ウクライナの攻撃部隊は少なくとも2ケタの旅団(最大で18個との情報もある)から成っており、そのうちの9個が西側同盟国から武器などの補給を受けている。
(1個の旅団は数千人の兵士を擁することが多い)
3月初めにインターネットに流出し、4月に入って広く出回った米国の機密文書によれば、この9個旅団には合計で戦車200両以上、その他の装甲車両800両、野戦砲150両が装備されるはずだ。
大きな部隊だが、大きな欠点もいくつか目につく。