(英エコノミスト誌 2023年4月15日号)
「取引志向」を強める世界では、影響力の対価が上昇する。
世界は今、活気を取り戻した西側ブロックと中国とロシアの専制国家同盟とに分断されていると描写することが普通になった。
しかし、この考え方には限界がある。
まず、フランスのエマニュエル・マクロン大統領による虚飾的な中国訪問の失敗が示しているように、西側は常に一枚岩であるわけではない。
そして、21世紀の大規模な地政学的争いにとってさらに衝撃的なことに、どちら側にも味方したくない国は100カ国を超えており、そこには少なくとも40億人、言い換えれば世界の人口の半分以上が住んでいる。
非同盟運動の変遷
以下論じていくように、世界秩序が崩れるにつれ、これらの「非同盟」諸国が集団として重要性を増していく。
インドやサウジアラビアといった国々は分断を超越した取引を行っており、世界的な問題についてもっと発言力を強めたいと思っている。
勘違いしてはいけない。
この「非同盟」の世界はあまりにもまとまりがないため、1つのブロックとして行動することは決してない。
だが、原油価格が1バレル80ドル超の水準にあっという間に戻ったのはなぜなのか、サプライチェーン(供給網)はどのように作り直されているのか、ウクライナの和平の見通しはどうなのかといったことを理解したい場合、その解を出す方程式に占める非同盟諸国の重みが増している。
そして、非同盟諸国の台頭は大きな問いも提起する。
中国と西側が非同盟諸国への影響力拡大で競い合うなかで、勝利を収めるのはどちらなのか、という問題だ。
非同盟の過去の実績は芳しいものではない。