(篠原 拓也:ニッセイ基礎研究所主席研究員)

 気候変動問題をめぐる動きが世界中で活発化している。ハリケーン、台風、豪雨などの自然災害の激甚化、海面水位の上昇、深刻な干ばつや大規模森林火災の発生などを背景に、各国で温室効果ガスの排出削減に向けたさまざまな取り組みが進められている。

 政府、産業分野のみならず、いまは消費者の立場からも、ライフスタイルを見直すことにより二酸化炭素(CO2)の排出量削減を模索する動きが見られている。

 CO2の排出にライフスタイルがどのような影響を及ぼすかを知っておくことは、気候変動問題に取り組むうえで重要だ。気候変動問題に関する政府間パネル(IPCC)・第3ワーキンググループ(WG3)が2022年に公表した『第6次評価報告書*1』の内容を中心に見ていくことにしよう。

男性は女性よりも年間CO2排出量が多いワケ

 まず、性別による違いから見ていこう。一般に、男性は女性よりも体格が大きく、多くの食物を摂取する。特に、肉類の摂取量では顕著に男性のほうが多い。通常、食肉用の牛や豚の生産には、飼料を含めてCO2の排出量が多い工程が含まれるため、肉類の摂取は食物関連の排出量の増加につながるわけだ。

 また、食事の場所を見ると、男性のほうがレストランなどで外食を行うことが多く、外食時には、アルコールやタバコの消費も多くなりがちだ。アルコールやタバコは摂取時もさることながら、製造時(醸造工程や、葉の加熱乾燥工程など)にもCO2の排出量が多いとされる。これらのことからも、男性のほうがCO2排出量が多い要因となっている。

 そのほか、男性は女性よりも自家用車を保有していることが多い。そのため、燃料をはじめ、修理、スペアパーツを含めて自動車の運用コストが大きくなる。男性は自動車などの乗り物や運転での移動に多くのお金を費やし、結果的にCO2排出量も多くなる傾向がある。

 なお、女性のほうが排出量が多い項目もある。医薬品、家庭用の洋服、家具などだが、これらの項目の男女差はそれほど大きくないようだ。

 男性のほうが女性よりもエネルギー使用量が多いという調査結果は各国で確認されている。例えば、ドイツ、ギリシャ、ノルウェー、スウェーデンでは、それぞれ8%、39%、6%、22%、男性のほうが多くエネルギーを消費しているという*2