環境リテラシーのある人がCO2削減に貢献するとは限らない
一般に、教育を通じて、環境に関する知識を習得した人は、環境に好ましい態度をとるようになる。ただし、必ずしも環境の知識が、排出量の削減に直結するというわけではない。
環境心理学の研究者であるBouman氏とSteg氏が2019年に公表した論文の主張*13は大変興味深い。
〈我々は環境危機に直面しているが、環境保護のための行動は遅れている。これは人々が環境を過小評価しているからではない。むしろ「他人が環境のことをどれだけ気にかけているか」を過小評価しているからである〉
つまり、人々が環境に関する行動をとるかどうかは、環境関連の知識の有無ではなく、他人の目を気にするかどうかにかかっている、と言っているわけだ。
高い教育を受けた人は、生産性が高く、高い経済成長、ひいては排出量の増加につながることがあり得る。ただし、高度な教育により温暖化の影響を知り、具体的な行動をとることができれば、排出量の削減につながる可能性もある。
教育を通じて、意思決定を行う人にその決定の影響を具体的に知らせ、必要な行動を促すことができれば、教育は排出量を削減する方法となり得るという。
結局、教育が排出削減につながるかどうかは、その内容次第と言えるのだ。