「所得上位10%」の世帯が排出量全体の4割前後を占める
所得は、個人の消費パターンの違いにつながる。一般に、所得が高い人ほど排出量が多くなるなど、排出量への影響という点で、所得は最も重要な要因とされている。特に、途上国では、高所得者と低所得者の排出量の違いが大きい。
IPCCの報告書によれば、世界的に見ると所得上位10%の世帯が排出量全体の34~45%を占めている。一方、所得下位50%は排出量の13~15%を占めているに過ぎない、とのことだ。
一般に高所得世帯は、レクリエーションや旅行、外食、交通・通信、教育、健康関連の排出量が多い。一方、低所得世帯は、光熱費や暖房や調理用の燃料、食料、生活必需品に関するものの割合が高い傾向がある。
なお、先進国では低所得であっても、世界的に見るとCO2排出量の多い部類に入ってくるので注意が必要だ。
例えば、アメリカでは平均して一人当たり年間15トンほどの排出量*7で、一番低い所得層でも10トンを超えていて、世界平均(一人当たり5トン)よりもはるかに多い*8。
アメリカほどではないが、日本も平均して一人当たり年間約9トンの排出量となっており、低所得でも排出量が世界平均よりは多いという人がかなりいるはずだ。先進国で生活すること自体が、CO2の大量排出と無関係ではいられないと言えるだろう。
どこに住むかはCO2の排出に大きな影響を与える。一般に、エネルギー関係の排出は都市部のほうが農村部よりも多い*9。エネルギーの構造は異なっており、農村部では、バイオエネルギー(バイオマス、バイオガス)、太陽光、風力、地熱などの再生可能エネルギーが投入されやすいとされる。
一方、エネルギー以外では、都市部の世帯は農村部の世帯よりも教育や娯楽などのサービス関連の排出量が多い。農村部の世帯は食料の消費や輸送に関連する排出量が多い傾向がある。これらは社会インフラの整備状況(公共交通機関の導入等)にも影響を受けるものと言える*10。