排出量を極力抑えるためには「家にこもる」のが一番いい?

 当たり前のことだが、人々が活動すればするほどCO2の排出量は増える。例えば、アメリカの研究によると、排出量と労働時間には強い正の関係があることが示されている*11。この関係は先進国でも途上国でも同じようにあると見られている。

 一般的には、労働時間が長いほど経済生産、所得、消費の水準が高くなり、CO2排出も増大する。経済が活性化することで、生産が増えて排出も増えてしまうという流れだ。

 一方、労働時間が短いと時間的に余裕が生まれる。通勤を例にとれば、時間的に余裕があればラッシュ時の満員電車ではなく、公共交通機関を選ぶことができて、その点で排出量を抑えることができる。

 ただし、別の研究では、非労働時間に行う余暇活動によっては、労働時間が短くても環境負荷の増大、つまり排出量の増加につながることがあるとされている*12。余暇活動の例として、外食や移動が挙げられる。修理やガーデニングも入るという。

 それでは排出量が少ない活動とは何か? 答えは、睡眠と休息、掃除、家での仲間との交流など家庭内での活動だという。例えば、コロナ禍の間、各国で外出の禁止や制限が課されていた時期は、CO2の排出量は抑えられていたと見られている。

 ただ、いくら地球温暖化が大変な問題だと言っても、「CO2の排出を抑えるために、家にこもって静かに睡眠や休息をとる」といった発想は、人間の活動そのものの否定とも言えるため、とりづらいかもしれない。