人類は危機的な飢饉にでもならなければコオロギを食べることはなかった

 2022年11月、徳島県小松島西高校で「コオロギパウダー」を使った給食が出されたことが報じられ、にわかにネット上で議論が巻き起こりました。

 年末にはいったん収束しますが、2月末に再び、「コオロギエキス」を用いた給食が出されたことが報じられると、全国的に賛否両論が巻き起こり、現在に至ります。

 先に結論を記してしまうと、本稿は「理系の観点から」「やや否定的」な見解を、根拠とともに示したいと思います。

 2015年、米国で話題になっていた「生物進化系統樹」の議論をサイエンス・ライターのエリザベス・ぺニシがまとめた記事が大きな話題を呼びました。

 遺伝子をつぶさに調べてみると、「昆虫」と「エビ・カニ」などの甲殻類とは、従来思われていたよりはるかに近縁であることが示されたのです。

「コオロギ食」の問題は、「エビ」や「カニ」あるいは「シャコ」や「グソクムシ」などを食べるか、食べないかという問題と並行して検討することに、分子生物学的な観点からは意味があると思われるわけです。

川エビの素揚げとコオロギ食

 皆さん、飲み会などの場で「川エビの素揚げ」を注文したり、食べたりしたことはありませんか?

 私はエビ、カニの類が大好きで、川エビに限らずあの種の食べ物をよく頼みます。

 コロモを付けずに揚げた川エビが、和紙を敷いたカゴなどに載せられて出てくる。

 食べ進めていくと、細かなエビの足やらヒゲやらが紙のうえに散らばってたりしますよね?

 でも特段、それを気にする人は少ないように思います。でももし、その中に1匹、ゴキブリの素揚げが混ざっていたら、どうでしょう?

 衣をつけた状態を考えると「サクラエビのかき揚」みたいなものが思い浮かびます。

 先日も天ぷら店で「サクラエビと春野菜のかき揚げ」が出てきて、おいしくいただきました。それがもし「サクラエビとゴキブリと春野菜のかき揚げ」だったら?