開戦時には対空レーダ、ミサイル・航空基地と滑走路、地上の航空機とその掩体壕、弾薬集積所、燃料集積所などが、ロシア軍の奇襲的なミサイルの集中射撃により制圧された。

 しかし、2022年10月以降のミサイル攻撃、無人機・有人機の航空攻撃では、ウクライナ全土の鉄道・道路の中枢・橋梁・トンネル、送電網・変電所・発電所・ダムなどの電力インフラ、軍需物資の集積所など、軍事的な兵站特に輸送網と補給機能のマヒ、民間のエネルギー・物流システムの破壊に重点が置かれた。

 それにより、NATOから送られた装備、弾薬・ミサイル、燃料などの軍需物資の中で輸送途上や集積拠点で破壊されるものが続出した。

 送られた装備・弾薬等の約3分の1しか第一線部隊には届かなかったとみられている。

 それを可能にしたのは、ISRと呼ばれる、情報・監視警戒・偵察ネットワークとウクライナ軍火力の射程外からの長射程のミサイル・ロケット弾、火砲、攻撃型無人機などの火力の組合せである。

 ISRを支えたのは、偵察衛星、偵察機、地上の偵察兵など従来の手段だけではなく、特に威力を発揮したのが、両軍とも何千機も運用した無人偵察機である。

 これらの中には偵察と攻撃の両任務を果たす無人機もあり、リアルタイムで確認した目標に対し、即座に攻撃をかけることもできた。

 ただし、特にNATOから供与されたウクライナ軍側の無人機については、ロシア軍の電子戦と濃密な対空ミサイル・火力網に阻まれ、期待したほどの威力を発揮できなかったとみられている。

 もう一つの特色は、火力の射撃精度の向上である。

 ダグラス・マグレガー米陸軍退役大佐も強調しているが、湾岸戦争で目を見張る威力を発揮した米軍の精密誘導兵器の威力は、今では世界各国の軍が同様のシステムを構築し、ほぼ同レベルの誘導精度を可能にしており、ロシア軍も例外ではない。

 ロシア軍は、自国のグロノスと呼ばれる全地球航法衛星システムをミサイルやロケット弾の誘導に利用し、飛躍的に誘導精度を挙げているとみられる。

 その結果、ウクライナ軍は前線に到着する前の移動途上や集結段階でロシア軍の無人機等に発見され、発見されればその直後に精度の高いロケット弾やミサイルの集中射撃を受け、大量の損耗を出している。

 ウクライナ軍の損耗の約75%は、これらの遠距離からの火力攻撃により発生したと見積もられている。