「90秒脱出ルール」を守るためには

 中部国際空港に緊急着陸した後、滑走路から出たすぐの誘導路上で脱出スライドを使った緊急脱出を実施し、コンクリート上の地面に身体を打ちつけるなどしてけが人を出したわけだが、全ての情報を共有していれば、機長が誘導路上ではなく駐機場でまで進み、タラップをつけて乗客を脱出させる方法をとったかもしれない。

 加えて、中部空港署に当該機が緊急着陸をするという一報が入ったのは、中部国際空港に着陸するわずか5分とはいったいどういうことなのか。

 当時の飛行高度から降下し、空港に進入するには20〜25分かかる。機長が中部国際空港に着陸する意思を管制官に伝えたのは降下の前になるから、20分以上も中部空港署に伝達されなかったことになる。

 当局はこうした経緯についても明らかにすべきであろう。

 航空界には、どの航空機であれ、機長が緊急脱出の指示を出してから90秒以内に全乗客を機外に脱出させなければならないとする、いわゆる「90秒ルール」がある。条件としては、全てのドアの半分を使ってとなっている。

 いざ脱出開始となれば、脱出口付近のCAは乗客に向って「ベルトを外して! 荷物を持たないで! ハイヒールを脱いで!」とコールしながら、ときに脱出をためらう乗客の背中をポンと押すようにして脱出スライドに飛び乗ることを催促する。

 脱出スライドと地面との間には段差があり、うまく足を伸ばして地面に立たないと危険なことにもなりかねない。ジェットスター機の事例では1人が尻もちをついて骨折した。