インドのモディ首相と会談する岸田首相(写真:ZUMA Press/アフロ)

(山本一郎:情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)

 先日、英エコノミスト誌に「米中が台湾海峡を挟んだ戦争の準備を進めているでやんす」という衝撃的な記事が出ました。この問題に関心のある人たちからすると、「さもありなん」という受け止めにしかならないのかもしれません。

【参考記事】
America and China are preparing for a war over Taiwan(The Economist)

 まあ、言われるまでもなく準備はするでしょうからな。本当に戦争が始まるのかどうかは別として。

 ここで、日本だけでなく、世界的なロシア・ウォッチャーや専門家の皆さんが言っていた話が思い出されます。

 ロシアがウクライナに侵攻する前、衛星写真などを通して、何か知らんがロシア軍がベラルーシやウクライナ国境に集結しているのを見たほとんどの専門家は、「ロシアはNATO(北大西洋条約機構)に加盟を希望するウクライナに圧力をかけるため、露宇間国境に軍隊を集結させ牽制している」と解釈していました。

 その結果が、ご存知の通りロシアによるウクライナ侵略の開始だったことを考えれば、私たちの心の中にはかなり強い「正常性バイアス」が働いているものと考えられます。それを理解したうえで現象を読み解き、未来予想につなげていかなければならないとも思います。

 そのような話も踏まえ、前述のエコノミスト記事や現況の米中台の活動を見ていると、何があってもおかしくないという前提で準備を進めなければならないことが明確に分かります。

 また、インドを訪問した岸田文雄さんが、2030年までの約7年間に9兆円を超える支援をインド太平洋方面に展開するよという話をしているのも、このあたりの安全保障で関係をつなぎとめておかなければならないというバックグラウンドがあるからだと理解しておく必要があります。

【参考記事】
インド太平洋に750億ドル支援 岸田首相、「法の下で共存」強調:朝日新聞デジタル