シリコンバレー銀行(SVB)の破綻で始まった国際金融不安はスイスの金融大手クレディ・スイスに飛び火した。10年以上続いた金融緩和の巻き戻しが始まった今、グローバル金融市場と為替市場はどうなるのか。長年、為替市場をウォッチする唐鎌大輔・みずほ銀行チーフマーケット・エコノミストの論考。
(唐鎌 大輔:みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト)
懸念漂う「第二のリーマンショック」
シリコンバレー銀行(SVB)の破綻で始まった国際金融不安は、わずか10日間で米地方銀行の経営不安を超え、欧州の大手金融機関の再編にまで至った。米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)の利上げ幅や回数に注視していた従前のムードは吹き飛び、「これで不安が収まったのかどうか」という目先の展開に目を奪われる雰囲気が充満している。
スイス最大手の金融機関であるUBSが同2位のクレディ・スイス・グループを買収したことですべてが終わるのか。それともまだ見えていない問題があるのか。
現状、スイス金融当局が無価値と判断したAT1債(※)が需要を失い、これを保有する金融機関から危機が広く伝播するのではないかとの懸念も燻る。AT1債市場は国際金融システムを崩すほどの規模を持たないとの評価が大勢だが、本当にそうなのか。
いずれにせよ、厳格な資本規制の下、「第二のリーマンショック」は起き得ないというのが市場の本心に近いはずだが、そこまで信じ切れていないというのが本稿執筆時点の市場心理と見受けられる。当面の値動きは不安定を強いられそうである。
※Additional Tier 1債(その他ティア1債)の略。AT1債で調達した資金は「普通株等自己資本(CET1)」を補完する形でTier1資本に組み入れられる
しかし為替市場、とりわけドル/円相場の見通しに関しては、目先の不安やそれに影響を受けた金利動向で右往左往しないように努めたい。
国際金融不安に伴う米金利急低下とこれに伴う円高・ドル安で円安予想が難しくなったかのようなムードもあるが、筆者の基本認識は全く変わっていない。