この裁判は長引くことが予想され、途中で桜井さんは癌による余命宣告を受けてもいた。それでも桜井さんは一歩も退かなかった。

 そしてついに、東京高裁によって茨城県警と水戸地方検察庁の取調べの違法性が認められることとなる。2021年8月、東京高裁は国と茨城県に計約7400万円の支払いを命じたのだ。そして国と茨城県の上告断念により、9月13日にこの判決は確定した。これは桜井さんの人生をかけた執念の結果だ。

「やっと重荷を下ろすことができた……」

 桜井さんのこの言葉がすべてを語っている。

「運命」と呼ぶにはあまりに過酷な人生

 以前、「長かった。人の一生の二倍も三倍も生きているような気がする」と、桜井さんは私に語ったことがあるが、運命というにはあまりにも過酷な人生だ。

 無罪確定後も冤罪被害防止の為の活動に身を投じた桜井さんと杉山さん。

 杉山さんは2015年に亡くなり、桜井さんも今は重篤な病の床についていると聞いた。