警察・検察から正式な謝罪は無し

 一方の桜井さんは獄中で詩を書いていた。

「身に覚えがないのに刑務所にぶち込まれて毎日毎日が長かった。だから自分の想いを詩にするようになったんだ」

 そう語る桜井さんの傍らには釈放後に結婚した奥さんが常に寄り添って、時に励ましていた。

無罪判決に喜ぶよりも怒りを感じたという桜井昌司さん(写真:橋本 昇)
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「女房はできた人だ。俺に色々と知識も与えてくれる。女房と知り合って俺は変わったと思うよ」

 その後、2010年7月に水戸地裁土浦支部で再審の公判が開始され、翌2011年の6月に二人の強盗殺人罪についての無罪が確定した。

 しかし、無罪判決の日、二人に笑顔はなかった。

 ここに至るまでの44年という歳月はあまりにも長い。なのに彼らは警察や検察から正式な謝罪の言葉を受けてはいなかったのだ。

 無罪確定から2か月後、二人は水戸地裁土浦支部に対して刑事補償を請求した。これに対してはそれぞれに1億3000万円と裁判費用の支払が決定した。

 しかし、桜井さんの怒りは収まらない。

 続いて2012年12月に桜井さんは国と茨城県を相手に約1億9000万円の国家賠償請求の訴えを起こす。