鹿児島県種子島沖に浮かぶ馬毛島。筆者が訪れた2011年、私設工事が進んでいた(写真:橋本 昇)
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(フォトグラファー:橋本 昇)

 鹿児島県種子島の沖合に浮かぶ無人島、馬毛島。

 現在、政府はここに新たな自衛隊基地の建設を進めている。ちなみに島の面積は8.20平方キロ、日本で二番目に大きな無人島だ。

 今年1月12日、賛否両論が飛び交う中で建設工事は無事に着工された。防衛省もひと安心というところだろう。ここに至るまでに、この島をめぐっての長い物語があったからだ。

 物語の主人公はこの島の元オーナー立石勲氏。そして立石氏が立ち向かった相手は防衛省だった。

防衛省を相手の交渉、トントン拍子とはいかず

 立石勲氏は1933年鹿児島県枕崎市の生まれ。地元の水産高校を卒業後、遠洋マグロ船の乗組員となるが、30歳を前に陸に上がり建設会社を立ち上げたという。その後、羽田空港の埋め立て工事や出雲空港の工事などで着実に業績を伸ばしてきた立石氏が故郷でもある鹿児島県の馬毛島の開発権を取得したのは1995年のことだ。

 彼はその後10年以上の年月をかけて島の99の土地を取得、まさに島のオーナーとなる。つまりは島の開発は彼の意のままということだ。

 さて、どう利用しようか? 様々な開発構想が浮かんでは消えた。その中で彼は国防に着目する。そして、米軍の空母艦載機離着陸訓練(FCLP)用飛行場の誘致に乗り出すのだ。

 これは政府にとっても願ってもない話だった。FCLPは戦闘機のパイロットにとって欠かせない訓練だが、低空飛行でタッチアンドゴーを繰り返すため凄まじい爆音を伴う。そのために厚木基地を追い出された後は、遠く離れた太平洋上の硫黄島で訓練が行われていたが、もっと近場に訓練用の飛行場を設けることは日米両政府の長年の差し迫った課題だったのだ。