「1円もまけるつもりはないよ」

 事務所に戻り、賄いのおばさんが作った煮魚をおかずにどんぶり飯をかっ込みながら再び立石氏の話を聞いた。

「俺は子供の頃、知覧の特攻隊基地から特攻機が飛び立っていくのを見上げていたんだ。その時の光景は今も頭の中に叩き込まれている。だから、わが身を削ってでも国を守るということに協力したいんだ。これは愛国心からやっている事業なんだ」

 彼がそれまでに投じた費用は、土地の買い増しと造成工事を合わせると200億円を超えるという。防衛省側が提示する45億円などでは到底無理だと彼は言う。

「投じた費用分は回収しなくては……」と、彼は強気だった。

「防衛省は米軍戦闘機の訓練基地を他で探すふりをしているが、どこからも反対されるに決まっている。喉から手が出るほどこの島が欲しいくせに官僚の変なプライドで値切りやがるから話が進まないんだ。俺は1円もまけるつもりはないよ」

 立石氏は、不遜な笑みを浮かべたと思えば、口から泡を飛ばさんばかりに勢い込む、といった風でエネルギッシュだった。そして最後は必ず官僚の悪口に落ち着いた。

「あの官僚の馬鹿どもが……」