(フォトグラファー:橋本 昇)
今年3月6日、大阪高裁で39年前に起きた事件の再審開始が認められた。その事件とは1984年暮れに滋賀県日野町で酒屋の女性店主が行方不明となり、翌年1月に他殺体で発見されたという事件だ。
事件の3年後、常連客だった阪原弘(当時53歳)が強盗殺人罪で逮捕された。彼は裁判では無罪を主張し続けたが、2000年に無期懲役が確定し服役した。だが、その後も被告側は捜査に疑問が多いとして再審の請求を続けてきていた。その再審請求がようやくあと一歩で認められることになったようだ。
ただし、当人である阪原被告は2011年に獄中で病死している。
この事件が冤罪事件だと確定されても冤罪被害にあった当人はもういないのだ。
これまでも再審により冤罪と確定した事件はいくつかあり、それぞれに長い刑務所暮らしを強いられた人々がいる。
菅家利和さんもその一人だ。
精度の低かった当時のDNA鑑定技術
彼が巻き込まれた事件は1990年に栃木県足利市で起きた幼女誘拐殺人事件だ。
1990年5月12日、足利市内のパチンコ店の駐車場で父親がパチンコをしている間に当時4歳の女の子が行方不明となり、翌日渡良瀬川の河川敷で女の子の他殺体が発見されたのだ。
目撃者の証言を基に捜査が行われたが、行き詰まった警察は次に「独身で子供好きな男」というプロファイリングに基づいて当時幼稚園バスの運転手だった菅家さん(当時45歳)を捜査線上に浮かび上がらせ、身辺調査を始める。
DNA鑑定が決め手となり菅家さんは1991年12月に逮捕される。そして取調べを受けた菅家さんは犯行を認めた。