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写真:ロイター/アフロ

(文:上昌広)

新型コロナワクチン接種を危険視する記事が相次いでいる。切り取られた事実しか説明できない牽強付会なデータ解釈の続出は、日本という国家に向けられた国民の根深い不信を映している。

 メディアでのコロナワクチン批判が盛り上がっている。口火を切ったのは週刊新潮だ。昨年12月22日号で『コロナワクチン「不都合なデータ」徹底検証』という記事を掲載した。その後、8号連続でワクチン批判記事を掲載している。

 新聞は静観したが、週刊誌は追随した。週刊文春と週刊現代は3回、週刊ポストは2回、批判記事を掲載している(2月22日現在)。なぜ、ワクチン批判は盛り上がるのか。その実態と背景について考察したい。

女性に強い副反応が出がちな理由

 週刊誌が重視するのは、接種後、早期に亡くなった人がいることだ。週刊文春は〈昨年12月までに厚労省に報告された、ワクチンの接種後に死亡した事例は1917件に上ります〉(1月26日号)と報じている。

 さらに週刊現代は、〈2022年「ワクチン接種者数」と「超過死亡数」の推移〉というグラフを提示し、両者の形が似ていることから、〈昨年1月から10月末までの「超過死亡」が全国で推計9万人を超えた可能性がある〉(2月11、18日号)のは、ワクチンの副反応が影響していると論じる。

 これは日本に限った話ではないらしい。〈(海外でも)3回目のワクチン接種率と同じペースで「例年より増えた死亡者数」を示す超過死亡が増え、海外ではワクチンの“影”の部分に焦点を当てた報告や報道が相次いでいる〉(週刊新潮2月2日号)という。

 ワクチンには副反応がつきもので、稀に重症化する。コロナワクチン接種によって亡くなる人はいるだろう。我々は、このことを支持する研究結果を発表している。その結果を図1に示す。

図1

 これは厚生労働省が発表したデータを用いて、ワクチン接種後早期の死亡例の男女比を調べたものだ。接種後1週間以内は女性のほうが高いが、1週間を過ぎると男女比は逆転する。つまり、死亡率は時間の経過とともに変化していた。この変化は統計的に有意であり、偶然の影響では説明できない。

 これは男女とも同量のワクチンを接種しているため、女性には過剰投与になっている可能性が高いからだろう。ワクチンの投与量は臨床試験に基づいて設定されている。ファイザー製ワクチンの場合、その結果は、米『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン』2020年10月14日号に掲載されている。

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