(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)
岸田首相は1月20日に新型コロナ対策の関係閣僚会議を開き、この春にコロナを季節性インフルエンザと同じ「5類」に移行する方向を固めた。医療の無償化などのコロナ対策を大幅に見直し、屋内でのマスク着用は原則不要とする。いつ移行するかは感染の状況を見て決めるが、今年(2023年)4月が目途だという。
日本では新型コロナの被害は欧米に比べて桁違いに少なかったが、政府は2020年2月に指定感染症に指定した。その後も感染も死者も増えないのに、2021年2月に「新型インフルエンザ等感染症」に指定し、そのまま今日に至っている。それを今度ようやく見直すわけだが、日本の感染症対策が混乱した原因はこの分類にある。
「新型インフル等感染症」に指定したのが失敗
まずこの3年間をデータで振り返ってみよう。ここで大事なのは、恣意的な要因の多い「コロナ感染者数」ではなく、国際比較できる超過死亡で考えることだ。これはすべての死因による死者が、平年のトレンドに比べて多くどれぐらい多かったかをみる指標だが、日本の顕著な特徴は、2020年にはマイナスだったことだ。
図1のように2020年4月には、イギリスの超過死亡率は107%(平年のほぼ2倍)だったが、日本はマイナス3%だった。その後も英米で数十%の超過死亡が出ているとき、日本は平年より死者の少ない状態が続き、2020年は約3万5000人の過少死亡だった(国立感染症研究所調べ)。
世界的な大流行が始まった2020年2月に、コロナを指定感染症(危険な感染症の暫定的な分類)に指定したのはやむをえなかったが、その後も感染も死者も増えなかった。「42万人死ぬ」などのデマが流されたが、感染はほとんど増えず、死者は平年より少なかった。
これは明らかに英米とは異なる状況で、安倍元首相は2020年8月に指定感染症の扱いを見直す方針を表明したが、その直後に辞任した。その後任の菅義偉首相は、この問題にまったく触れず、ワクチンの大量接種を指示した。