都内のPCR検査所(写真:アフロ)

(池田 信夫:経済学者、アゴラ研究所代表取締役所長)

 国立感染症研究所が発表した「超過死亡数」の統計が、大きな反響を呼んでいる。今年(2022年)1月から6月までの合計で、最大4万6000人と史上最多のペースだ。これは新型コロナが原因だと思う人が多いだろうが、同じ時期のコロナ死者数は約1万2000人である。

 その原因は何か。感染研は「医療の逼迫だ」と説明しているが、それだけでコロナ以外の3万人以上の死因を説明するのは困難である。超過死亡のピークはコロナワクチンの追加接種のピークと重なり、もっとも増えた死因は「老衰」なのだ。

超過死亡の原因はワクチン追加接種か

 超過死亡数という言葉は、厚生労働省の発表にもマスコミの報道にもほとんど出てこないが、世界保健機関(WHO)が感染症の流行状況を国際比較するとき使う客観的指標である。感染症の「死因」の判定にはバイアスがあるが、「死亡数」にはほとんどないので、死亡数が平年の予測値からどれぐらい増えたかを基準にして、感染状況をみるのだ。

 これはすべての死因による死亡数の増減をみているので、東日本大震災のような大きな災害があった場合にも増えるが、普通は感染症が超過死亡の最大の原因である。2020年以降は世界的には、超過死亡数はほとんどコロナ死者数と一致している。

 ところが日本では、2020年の超過死亡数は平年に比べてマイナスの過少死亡だった。これは2021年2月の当コラム「新型コロナで日本の死者はなぜ減ったのか」でも指摘したが、厚労省はその原因を説明できなかった。

 2021年の超過死亡数は最大4万6000人だったが、今年は6月まででそれと同じだ。これは一見、コロナ第6波(オミクロン株)による死者の激増だと思うが、その7割以上はコロナ以外の死因だった。

 これについて指摘されているのは、ワクチン接種回数との相関である。次の図1のように今年初めの超過死亡数のピークは、3回目の接種回数のピークと一致している。このため追加接種が、超過死亡数の増えた原因ではないかという疑惑が出てきたのだ。

図1 ワクチンの接種回数(札幌医大 フロンティア研 ゲノム医科学
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