(舛添 要一:国際政治学者)
昨年2月24日にロシアがウクライナに侵攻してから1年が経とうとしている。ロシアは軍事攻勢を強め、ウクライナも西側から供与された武器で反撃し、停戦のめどなど全く立たない状況が続いている。
NATOにも支援疲れが
2月14、15日にNATOは、本部のあるベルギーで国防相会議を開き、ウクライナ支援を継続することを確認した。戦闘の激化に伴い、弾薬不足が目立ち始めているため、弾薬の生産能力を強化することで合意した。
ウクライナの戦場では大量の弾薬が消費されており、生産が追いつかないため、供与しているNATO加盟国の軍隊の弾薬備蓄が急速に減少している。そこで、各国とも危機感をもって弾薬の増産ピッチを上げようというわけである。
これまでも西側は、155ミリ榴弾砲、対戦車ミサイル、対空ミサイルなどを供与しており、戦車の供与も決めている。ウクライナは、次は戦闘機や長距離ミサイルを求めているが、そこまで武器供与を拡大すると、ロシアとの対立がさらに深刻化する危険性があるので、NATO側は慎重な姿勢を貫いている。
そして、西側諸国も、光熱費、食料費などの高騰でインフレが昂進し、国民の生活が苦しくなってきている。ハンガリーのオルバン首相のように、NATOやEUがいつまでもウクライナ支援を継続することに批判的な声もある。
自国の安全保障を不安にするのみならず、停戦を遠のかせて生活苦を長期化させるような今の対応に、西欧諸国の国民の不満は嵩じている。それが、イタリアのように、極右政権を生むことにつながっている。