(国際ジャーナリスト・木村正人)

「かつて米国は世界の4割近い半導体を製造していた」

[ロンドン]「昨年、私はこの場で米国の才能と可能性の物語を語った。携帯電話から自動車まで、あらゆるものを動かす指紋ほどのコンピューターチップ。これは米国で発明された」――ジョー・バイデン米大統領は2月7日夜、連邦議会上下両院合同会議での一般教書演説(施政方針)で力説した。

2月7日、連邦議会議事堂で一般教書演説を行うバイデン大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

「かつて米国は世界の4割近いチップを製造していた。しかしこの10年でその優位性は失われ、1割に落ち込んでしまった。コロナ危機で海外の半導体工場が止まった影響をわれわれは目の当たりにした。いま自動車は1台当たり3000個のチップを必要とする。米国メーカーはチップ不足のため十分に自動車を製造できなくなった」

「自動車の値段は上がり、労働者は解雇された。冷蔵庫、携帯電話まであらゆるものが同じ状況に陥った。こんなことを二度と繰り返してはならない。だからこそ、われわれは超党派で『CHIPS及び科学法』を成立させた。米国のサプライチェーンが米国で始まるようにする。サプライチェーンはこの米国から始まるのだ」

 バイデン政権は昨年8月、国内半導体産業を復活させるため2800億ドル規模のCHIPS及び科学法を成立させた。半導体を米国内で製造する企業への520億ドルが含まれる。

 しかし半導体需要は冷え込み供給過剰となり、価格急落と一時解雇に苦しむ。民主党エリザベス・ウォーレン上院議員は補助金が株主還元に使われないよう受給企業の自社株買い禁止を訴える。