(古森 義久:産経新聞ワシントン駐在客員特派員、麗澤大学特別教授)
ロシアのウクライナ侵略について米国では、プーチン大統領はウクライナ完全制覇への野望をまったく揺るがせておらず、イランからの協力まで得て兵器の増産を着実に進めている、といった見解が打ち出されるようになった。
米欧諸国がウクライナへの新たな戦車供与など軍事支援を強めてはいるが、戦況はこのままだとロシア側の攻勢がさらに激しくなるという見通しが強くなってきた。
イランと合同で無人機製造工場を新設
米国の民間研究機関の中でウクライナの戦況を最も細かく追っている「戦争研究所(ISW)」は2月9日の「ロシア攻勢評価」報告で、プーチン大統領が、ウクライナ政権に対して長期の消耗戦を断固として続けるという前提に基づき、ロシア国内の兵器製造工場を中長期にわたり継続的に稼働し拡充することを改めて命令した、と伝えた。
同報告によると、プーチン大統領は2月9日に、軍事生産を管理するロシア政府の戦略構想局の最高幹部と会談し、兵器や弾薬の生産量を徐々に増やしていく中長期の安定増産という方針を伝達した。この方針は、ウクライナに対する長期戦を可能にするための防衛生産インフラを拡大する意図に基づいているという。
また同報告は、ロシア政府・国家安全保障会議のディミトリ・メドベージェフ副議長(前首相)が、ウクライナ戦のために偵察用、攻撃用の無人機の増産を急ぐ方針を2月初めに言明したことを伝え、イラン当局の協力を得てロシア国内にロシア・イラン合同の無人機製造工場を新設し、当面、合計6000機の無人機製造を目指す政策を公表したことを強調していた。