鉄道で運ばれるM1エイブラムス戦車などの米軍の装甲車(資料写真、2019年7月2日撮影、写真:ロイター/アフロ)

(数多 久遠:小説家・軍事評論家、元幹部自衛官)

 昨年(2022年)2月24日、ロシアが2014年から占領していたクリミア、ドンバス、ルハンシクの一部地域に加えてウクライナ全土の占領を目指して侵略を開始しました。その時から、まもなく1年が経とうとしています。

 アメリカやドイツなど戦車を生産している主要国は、これまでウクライナに対する戦車の供与を拒んできました。しかし、ウクライナ支援に積極的なNATO諸国の圧力もあり、イギリスの「チャレンジャー2」、ドイツの「レオパルト2」、アメリカの「M1エイブラムス」の3種もの第3世代戦車がウクライナに供与されることが決まっています。

 乗員の訓練などが必要なため、これらの戦車が実際にウクライナの戦場に姿を現すのはもう少し先になります。しかし、既に戦局への影響は表れています。

 以下では、アメリカをはじめとした各国がなぜ今戦車供与に踏み切ったのか、その理由を考察してみたいと思います。

外れたアメリカの思惑

 ロシアが国連の常任理事国だったことも影響していたと思われますが、ロシアが2月24日にウクライナ侵攻を開始してから昨年夏頃までは、アメリカは経済制裁とウクライナへの支援によってロシアを撤退に追い込めると考えていた節があります。ロシアに対して強硬な姿勢で知られるブリンケン国務長官が国連や各国を飛び回って制裁の強化を訴えていた時期です。