ニュースで知るのは男ばかりである。しかしわたしが通院している脳外科病院では、圧倒的に女性患者が多い印象がある。たぶん統計を調べればわかるのだろうが、高齢女性は要注意である。しかしこれも、要注意とか気をつけたいといっても、注意のしようがないし、気のつけようがない。

 脳梗塞の初期症状として「FAST」といわれるものがある*3。「F」は「Face」のことで、顔の左右どちらかがゆがむ、片方の目が見えにくくなる、などの症状。「A」は「Arm」のことで、手に持ったものを落とす、両手を挙げたままにできない、手に力が入らないなど。「S」は「Speech」で、言葉が出ない、もつれる、ろれつが回らないなどの言葉の障害。

*3 例えばhttps://okayama-gmc.or.jp/oth/magazine/298/

「T」は「Time」で、これは症状ではない。このような異変を感じたとき、いかに早く治療までもっていくか、それまでの時間が勝負になるということである。

 脳梗塞の手当は発症してから4時間半以内に治療すればだいたいは大丈夫とされている。「t-PA」という血栓を溶かす薬が有効で、細胞が壊死する範囲を最小限にすることが可能だとされるが、この薬が有効なのが発症後4時間半以内なのである。

救急車を呼んだのが9時間後だった

 わたしはいまから4年半前の2018年10月、71歳のときにいきなり脳梗塞に襲われた。そんな病気になるなど、まさに青天の霹靂だった。それまでは鼻風邪をひくくらいで、病気一つしたことがなかったからである。

 発症したのは、外出から帰った夕方の4時頃である。左半身がいきなり無力になり、糸を抜かれた操り人形みたいに倒れたのである。数分で回復したので、パソコンですぐ検索した。「脳梗塞」と出たが、「まさかな」と思った。今思えばこれがだめだったのだが、初めての経験であり、しようがなかったといえばいえる。

 そのときに「4時間半以内に病院に行く」ということを知ったのだが、すぐに回復したこともあり、まさか脳梗塞だとは思わなかった。しかしその後、二度ほど腕の脱力などが起こり、「こりゃだめだ」と救急車を呼んだのが午前1時頃。発症から9時間後だった。

 MRIはとったが、どういう治療をされたのかは覚えていない。わたしの場合、血管が詰まった部分は「放線冠」という極小部分だったらしい。結果、なんとか事なきを得たが、実際は危なかったのかもしれない。そのまま左半身不随になっていても不思議ではなかった気がする。

 わたしの場合、前兆はまったくなにもなかった。だから前兆が一切なくても、脳梗塞にはなるのだと思ったほうがいい。予防もできない、前兆もないとすると、罹った場合にいかに迅速に対応するか、が大事になる。