(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 昨秋以来、ほぼ4か月ぶりに「歩き」(ウォーキング)を再開した。

 2年前に脳梗塞を患ってから、高血圧対策のため、日々の「歩き」はわたしの必須の日課となった。それが昨年のコロナ騒ぎやらなにやらで気が緩み、ついずるずるとさぼってしまったのである。それでも当初は血圧が上がることもなく、大丈夫そうだなと、調子に乗ってしまった。

 今年、新年早々に出された緊急事態宣言も2回目ともなると、本気なのは医療関係者だけで、市民だけでなく政治家も役人も、どうせ大したことはないだろうと高をくくってタガが緩んだ。それとおなじで、俗物のつねとはいえ、わたしも自分の体のことなのに、まあ大丈夫だろうと思ったのである。水を毎日最低1.5リットル(2リットルという医者もいる)飲むことも医者から命じられているのだが、これも冬にはよほど意識をしていないと飲み忘れるのだ。

 この気の緩みがほんとうに怖い。これまであれやこれやに関して、あのときちゃんとやっておけばよかったと後悔したことが、どれほどあったことか。案じていたとおり、血圧も徐々に高くなりはじめた。これは命にかかわることで、取り返しがつかない。これではいかんと反省し、今年から「歩き」を再開することにしたのである。

「市中大回り」に挑戦したものの

 再開初日の1月18日(月)、初日にしてはまずまずの10589歩。22日(金)は、再開記念にここで一発、豊臣秀吉の「中国大返し」ではないが、わたしが「市中大回り」と称しているコースを歩こうと意気込んだ。この市内外周コースはただ設定しただけで、これまでまだ一度も歩いたことはない。おそらく3万歩を超えるだろう。

 わたしの場合、ふつうの一歩は約75センチ、大股の一歩は78センチである(100メートルの歩数で調べた)。しかし、それを景気づけと、計算しやすいことから、勝手に一歩80センチとしている。こんなものはだいたいでいいのである。それだと3万歩は、概算24キロ歩くことになる。闘志がわくではないか。

 わたしの「歩き」は、目標の距離を歩いたらさっさと帰るというやりかたではない。出かけたら、喫茶店で休憩したり、店で昼食を食べたりと、半日はかける。そのつもりで満を持して、当日の正午に出発した。午後3時、14000歩あたりまではなんの問題もなく快調だったのである。