そこから話が弾んで、よくよく聞けば、この専従班というのは酒に強いことが条件のひとつで、まずは工場への理解を得るために、地元の住民にビールや酒を持っていって、うち解けるところからはじめるのだという。それから接待や折々の心遣い。そうして工場が土地を融通してもらったり、利用する水の利権を確保したりする。そんな役割のひとつのつもりで、私に料理で話題を提供したという。それが効かないとなると、こんどは私の出自を肴に酔い潰しにきたわけだ。

日本よりもはるかに深い中国の昆虫食食文化

 中国では、もっと他にも虫を食べる。たとえば、蚕。それも蛹ではなく、まだ這って桑の葉を食べているやつだ。しかも日本では白いが、中国では緑色をしていてひとまわり大きい。これを素揚げにして食べる。蚕はピンと真っ直ぐに張ったスナック菓子のようになって、中味は空洞。途中でぐじゃというものに出くわすが、おそらくそれが内臓の塊なのだろう。そんなものに日本とは縁はないと思うかも知れないが、真贋はともかく、かつてこの緑色の蚕は日本で販売されていた緑色のガムの色素に利用されたという話に出くわしたことも、一度や二度ではない。

 山東省青島のレストランにいけば、いくつもの水槽に様々な活魚が泳いでいて、そこから食材を選ぶことができる。それと同じように、大きなボールのなかに這う蚕や、サソリを目にすることができる。サソリといっても指でつまめるほどの小さなもので、これも素揚げにしてスナック菓子のように食べる。

 その海鮮レストランには、「海腸」という海に生息する巨大なミミズのような生き物もトレーの上で蠢いていた。

中国で販売されている「海腸」。見た目はまるで「巨大ミミズ」のようだが、日本でも「ユムシ」などと呼ばれ、地域によっては刺身や酢味噌和えで食べられている(筆者撮影)

 文字通り人間の腸のような外見で、日本ではユムシと呼ばれる。こちらは炒め物にして食べた。歯ごたえは十分だった。