半世紀も前の「モーレツ社員」や「企業戦士」を崇める勤勉至上主義が、現在も染みついている(写真:アフロ)

就職・転職情報会社の学情が「就職人気企業ランキング」(対象は2024年卒の学生)を発表し、伊藤忠商事が5年連続でトップになった。根強い人気を誇る大手総合商社の中でも特に業績が好調だが、学生の支持を集めているのはそれだけが理由ではないだろう。「20時以降の残業の原則禁止」など働きやすさを目指した各種の人事施策が人気を押し上げている面がある。今回は、長時間残業を是とする「ブラック企業(予備軍を含む)」の体質と働き方改革の現在地を考えてみたい。

(岡部 隆明:就職コンサルタント、元テレビ朝日人事部長)

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世につれ変わる就職人気企業

 4年くらい前、私は伊藤忠役員の講演を聴く機会がありました。「がん」にかかった社員の支援などの健康増進施策と講演者の温かい人柄が強く印象に残っています。

「就職人気企業ランキング」は学生の心情やイメージに左右されるアンケート調査に過ぎません。しかし、その時々の世相を反映するとともに、人気・不人気の選別は厳しいものがあります。

「2024年卒 就職人気企業ランキング」のベスト10(学情ホームページより)
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 私が就職活動していたバブル期を振り返ってみると、文系は都市銀行が、理系は電機メーカーが上位に位置していました。その後、都市銀行は合併してメガバンクになり、電機メーカーは厳しい国際競争、淘汰の波にさらされました。

 2000年くらいからでしょうか、ANA、JAL、JTB、オリエンタルランドといった旅行・レジャー関連企業が人気を高めました。ここ2年間はコロナ禍によって低迷しましたが、行動制限緩和や旅行支援策もあり、学情の今回の調査ではJRやホテル・アミューズメント企業も含めて、総合ランキング100社のうち13社がランクインし、復活しています。

 このほかに講談社、集英社などの出版業界や、任天堂、ソニーグループなどのゲーム業界が人気を集めているのが目にとまりました。